大学院医系科学研究科 彭 徐鑫 さん

取材日:2023年1月13日

医系科学研究科の彭徐鑫さんにお話を伺いました。
彭さんは、令和3年4月に広島大学の医系科学研究科博士課程後期に進学し、リサーチフェロー(サステイナビリティ学分野)に採択されています。
今回は、彭さんに、博士課程後期で実施している研究や生活の様子など、様々なお話を伺ってきました。(記載の情報は取材時点のものです。)

【博士課程後期の研究内容について】

■彭さんの研究内容について教えてください!

日本と中国の若者世代の介護への意識を比較する研究を行っています。
中国は「一人っ子」政策の影響で、将来の家族構成が、祖父母が 4 人、両親が 2 人、子供が 1 人という4-2-1になっていきます。このため、今後数十年で家族介護者の不足が重大な社会問題になると予測され、社会が介護を担える福祉環境づくりが重要となってきます。しかし、介護を担う若い世代を対象とする研究はほとんどないのが現状です。私は、介護保険が浸透した日本と中国の若者世代の意識を比較して、両国間の政策が異なる背景の中で、若者世代がどのような考え方を持つかを明らかにすることを目指しています。

具体的には中国人・日本人学生にインタビューやアンケートを行いながら、親の介護に対する考え方を調査し、社会制度や文化的背景と絡めながら日中間の差を明らかにしていく国際共同研究を行っています。現在はインタビュー調査を終えましたので、これからさらに学生を対象に横断調査を行う予定です。
また、自分の研究以外にも、研究室の共同研究として、地域活動に参加している高齢者や日本で働く中国人看護師を対象とした研究に携わっております。具体的には、高齢者の健康状態やソーシャルサポートと社会的孤立との関連性を明らかにする調査や、日本で働く中国人看護師が外国で体験している看護困難感を明らかにする尺度開発研究です。今後は中国広州医科大学との国際共同研究もあり、日中両国の看護学生に対する在宅ケアの育成体制の相違点と共通点を分析することも担当します。

■日本と中国の介護意識や制度の違いについて詳しく教えてください。

まず、介護意識の男女差が大きな違いです。日本では介護は女性や長子がやるものだという考えが強いですが、中国では家族全員でやるという性差のない平等的な意識があります。中国では、幼少期から男性でも家事をするよう言われていることが多いです。
また、社会制度も大きく異なっています。日本では介護に関する法律が多く、システムも整備されています。中国では、家族の団結力が強く親孝行の意識が強いため、仕事より介護を優先する人が多いです。このようなことを背景に、両国の利点をどうやったらさらに伸ばすことができるのかを考えながら研究していきたいと思います。

彭さんの研究室の様子

【博士課程後期への進学について】

■広島大学に進学した経緯について教えてください。

私は大学卒業後、中国の保険会社で働いていましたが、「もっと介護保険について研究したい」と感じましたので、大学院への進学を決めました。進学先に日本の大学を選んだのは、介護保険が浸透している国だからです。
大学院進学を考えていた頃に、現在の指導教員である中谷久恵教授の論文に出会い、強い感銘を受けました。その後、中谷教授が介護保険と地域保健について発表した論文を読み、この教授に指導してもらいたいと思いました。その想いが広島大学への進学の決断に繋がりました。中谷教授は、まだ日本語が分からない私に対して、とても親切に接してくれています。中谷教授との出会いが、私の人生に大きな影響を与えてくれました。

■日本に来る際に何か不安はありましたか。

日本に来る前から、インターネットで他の留学生のVlogやYouTubeを見ていましたので、あまり不安は感じませんでした。ただ、故郷の辛い料理が大好きですので、日本に行っても自分の口に合う食べ物に出会えるかなと、そういう意味での不安はありました(笑)。

■その後、日本での生活はいかがですか。

日本に来たばかりの頃は、日本語が分からず少し苦労しました。お店で店員さんが何を言っているかが全然分からなかったのです。
でも、研究室の方や、他の留学生の方が紹介してくださって、日本での友達もすぐにできました。博士課程前期の頃には、大学の図書館など、さまざまなアルバイトに従事していましたので、バイト先の同僚や後輩とも友達になりました。日本語能力は、そうやっていろんな方と積極的に話したことでだんだん向上してきたと思います。日本で暮らし始めてもう5年目なので、今では大丈夫です。

■日本への留学について、ご家族は心配されませんでしたか。

実家では私も家事を担当していました。だから、両親が私を心配するというより、私が両親を心配していました。ここ数年はコロナ禍になってしまったこともあり、中国に帰国したのは5年間で一度だけです。その期間は、WeChatで家族と連絡を取りました。

■日本で彭さんの口に合う食べ物には出会えましたか。

日本で料理の辛さを選べるお店で、辛いものを選んで食べても私は辛さを感じなかったです。東京にすごく辛いラーメン屋があると聞いたので、いつか行く機会があれば挑戦してみたいです。日本料理では和菓子やモチが好きです。一番印象に残っているのは、宮島の揚げもみじまんじゅうです。

【博士課程後期の生活について】

■所属している研究室の構成を教えてください。

博士課程前期の学生が3名、博士課程後期の学生が11名います。そのうち留学生は、博士課程前期に1名、博士課程後期に4名います。14名のうち男性の学生は私だけです。

■男性の学生がひとりだけなんですね。心細く感じることはありませんか。

それはまったくないですね。研究室はみんな仲よく過ごしています。何かあったら他のメンバーが相談にのってくれるので、全然心細い感じはしないです。研究室以外の男性の留学生にも友達はたくさんいますし、東広島キャンパスの留学生とも交流する機会があります。

■毎日のスケジュールを教えてください。

博士課程後期1年生の頃は講義に合わせた生活をしていましたが、今は講義がないので、22時頃に帰ることが多いです。私の場合は、夜に研究を進めた方が効率よく学べるタイプなので、昼間は遅めの時間帯から活動するスケジュールを立てています。休日も研究室に来て、自身の研究を進めることが多いです。TA (ティーチング・アシスタント) や研究員の仕事もしています。

■研究活動に行き詰まったときやモチベーションが下がったと感じるとき、どのように解消していますか。

今までそういう状態に陥ったことがなかったと思います。周りの方から「彭さんはずっと元気だよね」ってよく言われています。中国の保険会社を辞めて日本に来ることを決めた時に、将来の目標を立てましたので、自分の選択した道だと思って一生懸命やることが当たり前になっています。

■彭さんはリサーチフェローに採用されていますが、リサーチフェローシップ制度について感じていることがあれば教えてください。

研究費や研究専念支援金を支給いただけることはもちろん、大学のいろんなイベントや支援制度の情報を積極的に提供していただけることがとてもありがたいと感じています。こうした情報源が増えたことはとても助かっています。
その上、研究に専念できるようになり、自分の研究をしっかり磨くことができます。それをきっかけに、他の研究者との交流や共同研究などの機会や時間が増えており、研究者として、研究の視野を広げることができます。自分の研究にもより深い理解を持って取り組んだ上で、日中両国の福祉社会の発展に寄与することを目指し、研究に専念しています。

【将来のキャリアパスについて】

■今後どのような進路を希望していますか。

日中両国の福祉環境づくりについて助言できるような研究を継続して、大学教員として若い世代を育成したいと考えています。現在も、後輩の学生とディスカッションする機会があり、とても楽しい時間ですので、今後もこうした生活を続けていけたらと思っています。今後、学生の意識や医療政策、地域看護等、他領域の関連するテーマについても携わっていきたいです。将来のキャリアパスについてはいろいろ考えないといけないことがありますが、まずは博士号取得を目標に、今の研究を頑張っていきたいです。

【後輩へのメッセージ】

■最後に、広島大学の博士課程への進学を考えている留学生にメッセージをお願いします。

広島大学は留学生の数が多いので、適切なサポートが提供され、支援制度も充実しています。日常生活も快適に過ごせると思いますので、留学に興味がある方は、広島大学への進学を積極的に考えてみてもいいと思います。
私が初めて日本に来た時には、日本語がほとんど分からなかったことによる苦労が多かったです。研究活動では英語が使えることもありますが、やはり生活面では日本語のやりとりが必要となることが多いので、できれば来日前に日本語を学んでおくことをおすすめします。

【取材者感想】

「非常にユニークで明るい方で、インタビュー中はずっと笑顔で話してくださいました。研究に関わる話では、日中間の介護や家事に関する価値観の違いに驚かされました。私自身は、これまでに日本の介護について深く考えたことはありませんでしたが、若い世代にとって重要な問題であると改めて感じました。彭さんの研究によって両国間の比較検討が進み、介護政策が改善されていくことを期待しています。」(教育学部第五類4年・林舞花さん)

「近い国であっても介護意識に大きな差があると知らず、取材を通して大変勉強になりました。どちらが良い悪いではなく、メリットとデメリットを客観的に分析し、メリットのほうを大きくしていきたいという姿勢はあらゆる面で大切だと思いました。彭さんの今後のご活躍をお祈り申し上げます。」(総合科学部総合科学科4年・Sさん)
※本人の希望により匿名にしています。

左から林さん、彭さん